太陽光発電の価格、メリットとデメリット、補助金について

太陽光発電の価格、メリットとデメリット、補助金について

土地活用の1つに「太陽光発電事業(ソーラー経営)」があります。

戸建て住宅の屋根に太陽光ソーラーパネルを設置し、余った電力を電力会社に売電することができるのは皆さんもご存知だと思います。

ですが、今回の太陽光発電事業というのは、所有している土地に太陽光ソーラーパネルを設置し、発電した電力を売却することで収入を得るというものです。

戸建て住宅の太陽光発電は、あくまでも家庭で使う電力を発電することがメインであり、その中から余った電力を売電することになっています。

しかし、今回の太陽光発電事業というのは、当初から売電することが目的なので、一般家庭の太陽光発電システムよりも大掛かりな設備が必要になるため、初期投資費用に対しての収益率などが重要になります。

ここでは、その太陽光発電事業に関する価格や、補助金などについて詳しく解説していきます。

太陽光発電(ソーラー経営)とは

自分が所有している土地に、大規模な太陽光ソーラーパネルを設置することで、大量の電力を発電し、それらの電力を電気会社に売電することを太陽光発電事業(ソーラー経営)といいます。

土地活用の太陽光ソーラー事業は、空き地にソーラーパネルを設置することから「野立て太陽光発電」とも呼ばれます。

所有している土地が広ければ広いほど、より多くの太陽光パネルを設置することができるため、より多くの電力を売電することが可能になります。

一般家庭の屋根に設置してある太陽光ソーラーは3kW~4kWが主流ですが、このソーラー経営では家庭用の10倍以上の太陽光パネルを設置することもあります。

戸建て住宅用の太陽光発電システム

住宅用の太陽光発電システム
(出典:http://www.toshiba.co.jp/pv/h-solar/index_j3.htm)

土地活用の太陽光発電事業(ソーラー経営)

野立て太陽光発電
(出典:https://looop.co.jp/epc/project_reference/)

このように広めの土地があれば、場所を選ばないのもソーラー経営の特徴の1つです。そのため、アパート経営や駐車場経営には向かないような土地でも、このソーラー経営であれば安定した収益を確保するができます。

地域によって売電価格が変動することもないので、家賃収入があまり見込めないような田舎にある土地だと、かなり収益性の高い土地活用法だと言えるのではないでしょうか。

ソーラー経営のメリット

土地活用事業には、多かれ少なかれメリット・デメリットがありますがソーラー経営は、ほかの土地活用事業に比べてメリットが多く、デメリットになる部分が少ない事業だと言われています。

以下がソーラー経営のメリットです。

  • アパートや駐車場経営には難しい土地でも、安定した収益が望める
  • 長期間、安定した収益が見込める
  • 設置後の手間が掛からない
  • 補助金制度がある

なぜデメリットが少なく、メリットが多いのかを含めて、ソーラー経営について解説していきたいと思います。

アパートや駐車場経営には難しい土地でも、安定した収益が望める

太陽光さえ確保できれば、比較的場所を選ばないのが、ソーラー経営の大きなメリットの1つです。

アパートや駐車場のように借り手がいなければ成り立たない事業ではないので、アパートや駐車場経営には向いてない立地の土地でも、太陽光さえ確保できれば事業として十分な収益を確保できます。

長期間、安定した収益が見込める

国の買取り制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)があるので、10年や20年という長期にわたり、安定した収入が得られます。

平成29年現在であれば、発電した太陽光エネルギーは、1kWhあたり、住宅用だと29円、事業用だと21円+税で買取りしてくれます。

国の制度なので、「せっかく発電したエネルギーを買取りしてくれなかった」ということもありませんので、すごく安心感があります。(※地域や契約内容によっては、買取量を制限させることもあります)

設置後の手間が掛からない

屋外に太陽光パネルを設置することになるので、定期的な清掃が必要ですが、アパートやコインランドリーなどと比較すると、設置後の手間はとても少ないといえます。

アパートやコインランドリーは、管理が面倒だと考えている地主も多いので、このソーラー経営であれば、そのようなわずらわしい管理やメンテナンスの心配をする必要もありません。

補助金制度がある

平成27年度までなら、太陽光発電の設備を設置することで、国からの補助金があったのですが、今現在、補助金制度は打ち切りになっています。

しかし、国からの補助金がでなくても、地域によっては市区町村からの補助金制度が利用できることがあるので、まずは自分が住んでいる自治体で補助金が受けられるのか調べてみましょう。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度とは

再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、一定価格で電気事業者が買い取ることを義務付けた制度です。
※首相官邸ホームページより抜粋

おおまかに説明すると上記のとおりなのですが、平成29年4月1日より、この再生可能エネルギーの固定価格買取制度が改定されました。

これは、すでに太陽光発電システムを設置している人、これから太陽光発電システムを設置検討している人、どちらの人にも関係してきます。

この新制度については、経済産業省のHPで詳しく解説されておりますので、そちらを参照頂ければと思います。

【経済産業調 資源エネルギー庁:なっとく!再生可能エネルギー

向いている土地かチェックする

基本的にどのような土地でもソーラー経営は可能なのですが、多少は向き、不向きの土地があります。

ソーラー経営に向いている土地

  • アパートや駐車場経営をするには、需要が見込めない地域にある土地
  • 田んぼや畑など、広い敷地を有している土地
  • アパートや駐車場にするためには、盛り土や切り土など、造成に多額の費用が掛かる土地
  • 日照が良い土地
  • 間口が狭かったり、L字型などの変形した形状の土地

アパートや駐車場をするには、あまり需要が見込めないような地域にある土地で、ソーラー経営をするのが一般的です。広い敷地であればあるほど収益性も高くなるので、田んぼや畑を止めてしまった遊休地などが、ソーラー経営には一番適しています。

また、ソーラー経営は土地の形状を選ばないので、変形地はもちろん、山の斜面をそのまま利用して設置することもでき、造成するには多額の費用がかかるような場所でも、比較的安価な投資ではじめることができます。

ソーラー経営向きじゃない土地

  • 市街地など、アパートや駐車場でも十分に収益事業が見込める場所にある土地
  • 日当たりが極端に悪い土地
  • 山奥など、近くに電線が通ってない土地

隣に高い建物があったり、日当たりが悪い土地では、ソーラー経営は向いていません。

近くに電線がないような山奥だった場合、発電した電気を送る電線を自分で引かなければならず、初期投資費用が多額になることがあるので、事前にしっかりと確認しましょう。

ソーラー経営のリスクや失敗例

他の土地活用事業と比較すると、あまりトラブルや失敗談はないと言われているソーラー経営ですが、思わぬ理由でトラブルになることもあるようです。その一部を紹介します。

  • 照り返しの問題で近隣トラブル
  • 高額な相続税を支払うことに
  • 隣地にマンションが建ち収益が激減

照り返しの問題で近隣トラブル

太陽光をすべて吸収することはできないため、太陽光パネルに反射した日光が、近隣を照らしてしまうことがあります。そのため、照り返しなど日照問題で近隣トラブルになるケースが起こることがあります。

ソーラー経営をはじめる際には、まず近隣住居への配慮を最大限検討するようにしましょう。

高額な相続税を支払うことに

アパートやマンション経営に比べると、初期投資費用も安価ですし、減税の優遇処置もほとんど見込めません。そのため、いざ相続する段階になって、多額の相続税が発生することが考えられます。

相続税が発生するようなケースが起こりそうな場合は、相続時のことまで想定して検討することをおすすめします。その際は、ソーラー事業者だけに相談するのでなく、第三者的立場にある税理士に相談するようにしましょう。

隣地にマンションが建ち収益が激減

ソーラー経営をはじめる土地の隣が農地や駐車場の場合は、数年後にマンションなどの建造物が建てられる可能性があります。

周りに高い建物が建ってしまうと、一日通して日照量が少なくなり、売電できる量も少なくなります。結果として予定していた収益を大幅に下回ることも考えられます。

隣地が空き地や農地の場合には、将来的なリスクまで考えておき、いざマンションが建てられた場合でも、太陽の軌道を計算するなどして、十分な量の発電か可能か想定しておくことをおすすめします。

ソーラー経営を始める際の流れ

ソーラー経営は、「住宅用余剰買取」、「低圧連係」、「高圧連係」、「特別高圧連係」という4つに区分されています。

電圧による区分

この4項目は、契約内容や手順も異なるため、まずは自分が始めようとしているソーラー経営が、どの項目に該当するのかを決めなければなりません。

1kWを発電するためには、平均5枚~7枚の太陽光パネルが必要だといわれています。そうした場合、低圧連係に該当する10kWを確保するためには、最低でも50枚~70枚の太陽光パネルの設置が必要ということで、それを土地の広さに換算すると約25坪~30坪となります。

100坪の土地だと仮定しても、発電できるのは30kW~40kW程度なので、これも低圧連係に該当します。

太陽光パネルの性能にもよるのですが、一般的には1kW=10㎡の土地の設置面積が必要だと言われています。なので、高圧連係となる50kW以上の発電量を確保するためには、50kW×10㎡=500㎡となり、この500㎡を坪数に換算すると、約150坪の土地が必要ということになります。

1kWあたりの太陽光パネル枚数 約5枚~7枚
1坪に設置できる太陽光パネル枚数 約2枚~3枚
1kWあたりの費用 約30万円~35万円

この3つの目安を覚えておいてください。そして、自分がソーラー経営を考えている土地の広さや、予算などを検討しながら、自分の土地ならどれくらいの発電量が確保できるのかを試算してみましょう。

メンテナンス契約を決める

太陽光発電システムは、設置後のメンテナンスは不要だと思っている方が多いので、「メンテナンス契約って?」と思う方もいると思います。

これまでは、太陽光発電システムのメリットとして、メンテナンスや管理の楽さが取り上げられていました。アパート経営やコインランドリー経営と比べると、管理もメンテナンスも楽であることに間違いありません。

しかし、あまりにも「太陽光システムはメンテナンスがいらない」という知識が一人歩きをしてしまい、間違った知識が広く周知されることになってしまいました。その結果、太陽光パネルをめぐるメンテナンストラブルが後を絶たず、大きな社会問題にもなっています。

そのような問題を受け、平成29年4月1日から改定されることになった新制度では、事業者が遵守するべき事項として、「適切な維持管理・保守管理を行うこと」というように、定期的なメンテナンスを実施することを命じたのです。

ソーラー業者を決める判断材料となっていた「価格」や「製品性能」に加え、今後は「どれだけアフターやメンテナンスをしっかりやってくれるか」という点も、業者選定に大きく関係してくることになりました。

ソーラー経営にかかる費用を計算する

ここではソーラー経営にかかる初期投資費用や、運用開始後のランニングコストについて紹介していきます。

初期費用

ソーラー経営は、土地の広さによって投資費用も大きく変わってきますので、今回は一般的な住宅用地である「70坪」を基準に考えてみます。

土地の広さ70坪、発電目安量25kWで試算
太陽光パネル(120枚) 約840万円
管理システム(パワコン、モニターなど含む) 約60万円
パネル設置台座費 約60万円
工事費 約100万円
合計 約1,060万円

※古家がある場合は、別途解体費用や造成費用が発生します。

設置する太陽光パネルの枚数が多くなればなるほど、1kWあたりの価格は安くなります。10年ほど前までは、1kWあたり40万円が平均だと言われていましたが、今は1kWあたり30万~35万円ほどに下がっています。

上記の試算表でも、25kWの発電に対してパネルの価格は840万円なので、1kWあたりのパネル価格は33.6万円となっています。

税金などのランニングコスト

ランニングコストが安価だといわれているソーラー経営ですが、実際にどれくらいのランニングコストが発生するのか紹介します。

ソーラー経営の主なランニングコストは、以下のようなものがあります。

  • 電気代
  • 点検・清掃などのメンテナンス費用
  • 保険代
  • 税金

いくらソーラー経営といっても、太陽光がない夜間などは電力でカバーしなければならず、電気代が0円ということはありません。

それに、2017年4月1日から改定された新制度に沿うと、これまで定期点検が不要だった50kW未満でも、定期的なメンテナンスや管理が義務化されていますので、それなりに費用を計上しておく必要があります。

さらに大きな出費となるのが、盗難や故障に備えた保険代です。この保険代に、固定資産税や所得税などの各種税金もしっかりと試算しておかなければ、大幅な増税になってしまう可能性もあります。

1つの目安に、経済産業省が発表している太陽光発電事業に関する「年間の維持管理費用」というのがあります。

その試算によれば、10kW~50kW未満の運転維持管理費は、1年間で6,000円/1kWとされています。今回試算した25kWであれば、年間6,000円×25kW=150,000円/年のランニングコストがかかるということです。

利回りを計算する

初期費用とランニングコストの目安がわかったので、あとは年間の収益がわかれば利回りを計算することができます。

利回りとは、投資した金額に対する年間の収益率のことをいいます。

利回りの計算式
利回り=(年間収益÷初期投資費用)×100

例えば、100万円の投資に対して、年間10万円の収益があった場合の利回りは10.0%となります。

この利回りを計算するためには、収益の試算をしなければなりません。ソーラー経営の場合、売電買取価格は固定されていますので、収益を計算するのは難しくありません。

平成29年度の買取価格は以下のように決定しています。

10kW未満 28円か30円(10年固定)
10kW以上 21円+税(20年固定)

毎年2円から3円のペースで買取価格は下がっているので、来年度も同じように、2円~3円程度の買取価格低下が予想されています。もしソーラー経営を検討しているのであれば、一年でも早く実施することが一番の得策となります。

買取価格21円で計算すると、年間の収益は1kWあたり22,680円となります。

21円×1.08(消費税)×1,000kW=22,680円

今回は25kWの発電量で試算しているので、以下のような計算になります。

22,680円×25倍=567,000円

567,000円が年間の売電収益となります。

利回りの計算方法

実際に、これらの数字を元に利回りを計算してみたいと思います。

売電による収益は「567,000円」、ランニングコストが「約150,000円」でしたので、年間の純利益は以下の計算になります。

567,000円ー150,000円=417,000円

利回りを算出するには、年間収益÷初期投資×100でしたので、利回りの計算は以下のようになります。

417,000円÷1,060万円×100=3.93

よって今回試算したデータであれば、年間の利回りは3.93%です。

初期費用を回収するのにかかる期間

10kW以上のソーラー経営であれば、買取期間は20年固定となっています。しかし、今回の試算した内容では、初期投資の1,060万円を回収するのに、約25年という期間がかかってしまうことになります。

当然ですが、買取保証がある20年以内で回収できないのであれば、安定した事業とは言えません。

今回は、初期投資費用もかなり高めに想定しているので、厳しめの結果になっていますが、それでもソーラー経営が美味しい土地活用術だとはお世辞にもいえません。

ではなぜ、これほどソーラー経営が土地活用の1つとして注目を集めているのかですが、それは、ほんの数年前であれば十分に安定事業として成り立っていたからです。

平成24年度の買取価格は、10kW以上であっても40円+税でした。40円の買取価格で試算した場合、今回の内容でも利回り8.7%を確保できている計算になります。

8.7%の利回りといえばアパートやマンション経営と同レベルなので、十分に検討する余地があったことがわかります。厳しい言い方になりますが、5年前と現在(平成29年度)では、まったく別事業のように収益が変わっています。

管理人の個人的な意見としては、今からソーラー経営を始めるというのは、あまりおすすめできません。せめて3年前であれば事業として成立したかもしれませんが、平成29年度の買取価格では厳しいと思います。

ただ、アパートやコインランドリーなどの事業が難しい立地にある土地であれば話は別です。

土地を所有しているだけで、毎年固定資産などの税金は払わなければなりません。他に収益事業が見込めない土地であれば、ソーラー経営を検討してみるのも悪くないと思います。

まとめ

ソーラー経営は、アパートや駐車場の運営が困難な地域であっても、安定した収益を生みだす土地活用事業として高い注目を集めていました。

しかし、年々電気の買取価格が下がっていることで、5年前と平成29年現在では、まったく別の事業のように収益性が違っています。

インターネット上には、古い情報も多数存在しており、昔に書かれた情報を今現在も同じように信じてしまう人も多いです。特にこのソーラー経営は、1年ごとで内容がどんどん変化しており、いかに新しい情報を入手できるかが、比較検討する際のポイントになってきます。

平成29年4月1日より、ソーラー経営に関する内容が大幅に改定されており、平成29年以前に書かれている内容とは大幅に異なります。

新制度改定後の情報を元に自分が所有している土地で、土地活用事業として成り立つのかをしっかりと検討するようにしましょう。

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