【不動産鑑定士が解説】深刻化する負動産!買い手がいない戸建の対策法とは

最近は「負動産」という言葉をよく目にするくらい、「売りたくても売れない家」というのが増えて来ています。この問題を解決するためのコツを、不動産鑑定のプロに解説していただきました

今回解説をお願いしたのは、株式会社グロープロフィットの代表取締役の竹内英二氏です。家売却で困っている人は、ぜひ参考にしてください。

株式会社グロープロフィット代表取締役竹内英二
竹内 英二(たけうち えいじ)
2000年大阪大学大学院卒。日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定や開発用地の仕入れ担当を11年間に渡り従事。
オフィスビル・賃貸マンション等の開発も行っていたことから、土地活用・不動産投資の分野に強い。
不動産鑑定士、中小企業診断士、宅地建物取引主任者等の資格を保有。

深刻化する負動産!買い手がいない戸建の対策法とは

なかなか売却できない不動産のことを「負動産」と呼んでいる人たちもいます。東京一極集中が加速する中、地方では売ろうにも売れない不動産が続出しています。

売れない戸建は、放っておくと、2次相続、3次相続が発生し、所有者が多数となってしまい、やがて所有者不明の土地となりかねません。全国では、所有者不明の土地は九州の面積以上にあると言われており、問題が深刻化しています。

そこでこの記事では、なかなか売れない戸建について、なんとか売る方法について解説していきます。

戸建はマンションよりも売りにくい

取引件数と平均価格

公益財団法人東日本不動産流通機構によると、2018年4~6月における首都圏の中古戸建と中古マンションの取引件数と平均価格は下表のようになっています。

成約取引件数 成約平均価格
戸建 3,261件 3,109万円
マンション 9,339件 3,331万円

マンションの方が取引件数は多く市場も活発に動いており、平均価格も高いです。一方で、戸建は、取引件数も少なく、価格も低いです。数字の面からも、戸建はマンションよりも売りにくい傾向にあります。

戸建が売れにくい理由

戸建がマンションよりも売れにくい理由としては主に以下の2点があります。

  • マンションよりも駅から遠い物件が多く、立地条件が悪い
  • 木造のためマンションに比べると躯体が早く老朽化しやすい

マンションの方が総じて場所が良い物件が多く、鉄筋コンクリート造で老朽化しにくいことから、価値が維持しやすく売却しやすいです。

一方で、戸建は、立地条件が悪い物件が多く、木造で早く老朽化しやすいため、価値も落ちやすく売却しにくい傾向があります。

2022年問題の影響

一部に2022年以降はさらに不動産が売りにくくなるのではとの声も聞かれます。結論からすると、2022年問題とは無関係に、既に地方の戸建は売りにくくなっています。この章では2022年問題について解説します。

2022年問題とは

2022年問題とは、都市部の中にある生産緑地と呼ばれる農地が、2022年に大量に売りに出され、供給過多になるのではないかという問題です。

生産緑地に指定された農地が2022年に指定を解除されるため、固定資産税が一気に上がり、農地を売却する人が増えるのではないかという予想がされています。

2022年は大した問題ではない

但し、生産緑地に多く指定されている土地が存在するのは、東京都ですので2022年問題は地方には大きな影響を与えません。

しかも、生産緑地は2022年に再度、特定生産緑地と呼ばれる生産緑地の指定を受けると、再び10年間は固定資産税が上がらないようになっています。

国も、生産緑地の解除によって市場が混乱しないように配慮をしており、2022年問題の影響は限定的と予想されています。

深刻化する郊外型ニュータウンの戸建

2022年問題とは無関係に、今後は大相続時代を迎えるため、今以上に戸建は売却しにくくなることが予想されています。

特に、今後、ますます売却が難しくなっていくのは、3大都市圏周辺にある郊外型ニュータウンにある戸建です。首都圏においてすら、郊外型ニュータウンの戸建は、徐々に売却しにくくなっています。

郊外型ニュータウンの戸建は、団塊の世代以上の人たちが多く所有しており、周辺は徐々にゴーストタウン化が進んでいます。今後、相続が大量に発生していくと、不要となる戸建が増えるため、今よりもさらに売却しにくい戸建が増加します。

既に、郊外型ニュータウン内で、親の戸建を相続で引き継いだ人は、早めに売却してしまうことをおすすめします。

買い手のいない戸建を売る方法

この章では、売れない戸建を売るための3つの方法について解説します。

一括査定サイトを利用する

売れない戸建に関しては、一括査定サイトを利用して、幅広く不動産会社から査定を取ることをおすすめします。査定を取ってみて、値段が付くということは、少なくとも売れるということを意味しています。

本当に売れなければ、値段が付かないため、査定のしようがありません。どんなに安くても、査定の値段が存在するということは、なんらかの経済価値があることの裏付けであり、それは売れるということになります。

売れない戸建を持っている人は、地元の不動産会社1社だけに売却を依頼して、諦めてしまっている人が多いです。

不動産会社からすると、安い戸建は仲介手数料も安いです。売れないと思っている戸建は、実は不動産会社が本気になって売却活動をしていないだけという可能性もあります。

あなたが売れないと諦めている戸建は、その原因は不動産会社が最初から真面目に売ろうとしていないというケースも多いのです。このような状況を回避するには、とにかく頑張って売却してくれる不動産会社を見つけることが第一歩です。

一括査定サイトを使えば、売却を手伝ってくれる複数の不動産会社を一気に見つけることができます。売れない戸建こそ一括査定サイトを使い、不動産会社探しに役立てるようにしてください。

瑕疵担保保険を付保する

築20年以内の戸建を売却する場合、買主が引き続きその建物を利用する可能性が高いです。買主が建物を継続利用する可能性が高い場合には、既存住宅売買瑕疵保険(「瑕疵担保保険」と略)を付保して売却すると、売りやすくなります。

瑕疵(カシ)とは通常有すべき品質を欠くことを言います。例えば、雨漏りや家の傾き、シロアリによる腐食等が瑕疵に該当します。

瑕疵担保保険は付保されていると、もし買主が購入後に瑕疵を発見した場合、修繕費用の一部を保険でカバーすることができます。瑕疵担保保険の保健期間と1住戸あたりの支払限度額は、下表の通りとなっています。

保険対象部分 保険期間 1住戸あたりの支払限度額
構造体力上主要な部分 引渡後5年間 1,000万円
雨水の浸入を防止する部分 引渡後1年間 500万円または1,000万円

中古の戸建住宅に関しては、特に瑕疵を気にする人が多いため、瑕疵担保保険が付保されていると安心して購入することができます。

また、瑕疵担保保険が付保されている物件は、不動産取得税や登録免許税の軽減が受けられ、住宅ローン控除も利用できるため、購入者に経済的なメリットもあります。

但し、瑕疵担保保険はある程度、売れる可能性のある戸建でない限り、効果を発揮することができません。

売れる可能性がほとんどないような戸建については、無駄になってしまう可能性があります。瑕疵担保保険の付保は、査定を取って、売れる可能性を十分に検討して上で実施するようにしましょう。

低廉な空き家は18万円を支払う

地方の不動産がなかなか売れない理由の一つに、不動産会社による非協力的な姿勢があります。仲介手数料は、取引金額が低いと安くなってしまうため、売れないような戸建は、不動産会社の商売にならないからです。

そこで、2018年1月より、400万円以下の不動産の取りに引き関しては、不動産会社が最大18万円まで報酬を受領することができるようになりました。

不動産会社が受領できる仲介手数料の規定は以下のようになっています。

取引額 (売買金額) 速算式(上限額)
200万円以下 5%
200万円超から400万円以下 4%+2万円
400万円超 3%+6万円

例えば、200万円以下の取引の場合、従来であれば10万円しか受領できませんでした。ところが、2018年1月以降からは、400万円以下の物件で、最大18万円までであれば、仲介手数料に加え調査費用等を加えて請求できるようになりました。

そのため、今後はなかなか売れない物件でも、不動産会社が多少、積極的に動いてくれる可能性はあります。売主にとっては負担が増える話ですが、それでも不動産会社を動かしやすくなったという点ではメリットです。

18万円の支払いは覚悟して、不動産会社を上手く活用しながら売却するようにしてください。

まとめ

以上、なかなか売れない戸建を売る方法について解説してきました。戸建は、値段が付けば売れることを意味します。売れない戸建は、再度、査定を取り直し、値段を付けてくれる不動産会社を探すことからやり直すのがポイントです。

郊外型ニュータウンは、今後ますます売却しにくくなっていきますので、今のうちに売却するようにしましょう。

※参考URL:公益財団法人 東日本不動産流通機構

目的別の仲介業者選びまとめ

  • できる限り高く売りたい
  • 急いで売って現金化したい
  • なかなか売れなくて困っている
  • 賃貸にしようか迷っている
  • 買取専門の業者を探している
  • ローン残債があるけど売りたい