農地の相続と売買の注意点、固定資産税について

農地の相続と売買の注意点、固定資産税について

全く耕さないまま荒れ果てていく田んぼや畑、思いがけず相続することになってしまった実家の農地、自分の田畑なのに自由に売却することさえ許されない現状など、日本が今抱えている農地問題について今回は考えていきます。

実家に農業をしている人がいるのであればご存知かと思いますが、田んぼや畑は自由に売買することができません。

田んぼや畑も立派な土地ですので、毎年固定資産税という税金もかかります。

「普通に会社勤めをしているから、自分には関係ない話だ」なんて思わず、家族や親戚に農業をしている人がいれば、いつか同じ問題が自分に降りかかる可能性は十分にあります。

いざそうなってから慌てることがないように、農地が抱える問題についてしっかりと知っておくようにしましょう。

日本が抱える農地問題の現状とこれから

今回は高齢化にともない、今後益々増加するであろう農地問題について考えていきます。

農家の後継者問題をメディアで目にしたことがある人も少なくないでしょう。実際に日本の農家人口は衰退の一途をたどっています。全盛期だと言われていた昭和35年頃には、農業就業人口は約1,545万人もいました。

しかし平成元年には565万人、そして平成20年で299万人とついに300万人を下回り、平成28年では192万人にまで減少しています。これは全盛期だと言われていた昭和30年代と比べると、約88%も農家人口が減少していることになります。

それでいて田んぼや畑の農耕地面積は、昭和35年で607haだったのが平成28年では447haなので、減少率はわずか26%減となっています。

農業をする人は約10分の1に減っているのに対して、田んぼや畑の農業地はたったの26%しか減っていないのですから、いかに日本国内において農地が余っているかというのがよくわかります。

なぜ農地面性が減らないのか

農家の人口が急激に減少しているのに、なぜ農地面積は一向に減らないのでしょうか。

それは田んぼや畑などの農地は、住宅用地のように持ち主の意思で自由に売ったり買ったりできないように法律で決められているのが大きく関係しています。

「相続したけど自由に売ることはできない、だからといって農家をするつもりもない」と、何も農作物を作らない休耕地ばかりが増えていき、毎年税金ばかりを納めることになり、持ち主はどうしたらよいのか分からず途方に暮れるしかないのです。

そして今後、益々同じような問題を抱える人が増加していくことは目にみえています。いざ自分が農地を相続してからでは遅いです。親や祖父母が農地を所有している家庭では、決してこの問題は避けて通ることはできません。

いざ相続してから途方に暮れてしまうことがないように、今のうちからある程度の知識を蓄えそれなりの準備をしておく必要があります。

農地とはどんなものか?

そもそも農地とは、どういった土地をいうのでしょうか。いちばん理解しやすのは、法務局などで取得できる土地の登記簿をみてもらうのが良いでしょう。

その登記簿の地目の欄に「田」や「畑」と書かれている土地が農地ということになり、このような土地には「農地法」という法律が適用されることになっています。

「農地法」が適用される土地であれば、住宅用地のように自由に売買することはできません。どうしても売買したいのであれば、「農地法」に沿った手続きを終えて、それからはじめて土地を売買することができるようになります。

しかしこの農地法に沿った手続きというのが、一筋縄ではいきません。管理人が不動産営業マン時代に、田んぼに数回賃貸アパートやマンションを建ててもらったことがあります。そのときに田んぼを宅地へ変更するために一通りの手続きは経験しましたが、想像よりもはるかに労力と時間が掛かりました。

そのため、一般の人が自分で宅地への変更手続きをやろうと思っても、そう簡単にできるものではないという印象です。

それほど面倒な「農地法」や「農地の売却」ついては、このあとの「農地を売却する際の注意点」で詳しく解説します。

売却の許可が出ない場合もある

ちなみに、面倒な手続きさえ辛抱強くやってしまえば、それだけで田や畑を必ず売却できるというものではありません。地域や所有している農地の広さによっては、どんなに頑張っても売却の許可がでないこともあります。

「自分の土地なのに売却の許可が出ないのはなぜなのか」、「もし売却できない場合はどうしたらの良いのか」。このような問題を抱えている方も多いのですが、実際のところ、これといった解決策はありません。

だからこそ、農地を相続したあと、どうしたらいいのかわからず途方に暮れている人が、日本全国には大勢いるのです。

農地の相続について

自分から進んで農地を開拓したり、購入したりする人は少ないと思います。農地の問題を抱えている人の多くは、親や祖父母から相続したものばかりです。

実家で農業をしているのであれば、一度くらいは「田んぼや畑を相続したら面倒だ」、という話を耳にしたことがあると思います。そのため自分が相続する段階になったら、「相続放棄」しようと考えている人も少なくありません。

膨大な広さの田んぼを相続したとしても、売却することができれば良いですが、そう簡単に売却できないのが農地です。

相続放棄というのも1つの選択肢だとは思いますが、親からの遺産を放棄するのであれば、その他の財産もすべて放棄しなければ成立しませんので、「田んぼや農地だけ相続放棄します」というわけにはいきません。

相続放棄というのは、農地と一緒に預貯金や自宅(不動産)、自家用車などもすべて相続しないということです。そのため、簡単に相続放棄という選択肢を選ぶことはできないはずです。

では、農地をどうにかして売却する覚悟で相続してしまえば、それで問題解決なのかといえば、決してそういうわけでもなく、もし相続するとしても、今度は相続税や相続の届出などの問題が発生します。

農地の相続税の計算は難しい

農地の相続税について話をしたいと思いますが、農地の相続税の計算ほど難しいものはありません。言葉で説明しても10分や20分では説明しきれませんし、聞く方も1度や2度説明されただけでは理解できないと思います。

農地の相続税の計算手順を載せておきます。

  1. 課税対象となる総額を計算する
  2. 基礎控除額を算出する
  3. 課税される遺産額を計算する
  4. 各相続人ごとの取得金額を計算する
  5. 各相続人ごとに税額を計算し合計する
  6. 各相続人ごとの割合分を算出する
  7. 各相続人ごとの相続税を算出する

最初の「農地の評価額を算出する」という部分だけでも、かなり難解です。農地といっても「純農地」、「中間農地」、「市街化周辺農地」、「市街化農地」というように、地域によって4つに分類されており、それぞれによって評価額の算出式が異なります。

これを説明するだけでも相当難しいです。

しかもこの4つのどれに属するかによって、相続税の額もまったく別物というくらい異なってきます。同じ3.3ha(約10,000坪)の農地を相続したとしても、この分類がどれになるかによって数百万円で収まる可能性もあれば、数千万円の相続税を納めることになる場合もあります。

ですので、一概に何haの農地を相続したからといって、「相続税の額はこれくらい」という参考例すら記述することができません。

農地の相続税に関しては、サイトなどの情報だけを信用して自分で計算してしまうよりも、税務署、ないし最寄りの税理士さんに相談する方が間違いありません。

農地の相続税には猶予特例がある

これは、あくまでも相続した農地で耕作を行うことを前提とした話になるのですが、農地の相続税は莫大になることがあるため、相続税を猶予(先延ばし)できる特例があります。

しかも一定の条件をクリアすれば、猶予してもらった相続税を免除されることもあります。免除条件の1つが「相続人が農業を20年続けた場合」などです。

農地の固定資産税

農地の固定資産税について説明する前に、農地の課税評価の体系を説明しておきます。農地は大きく「一般農地」と「市街化区域農地」の2つに分けられて税の計算がされます。

基本的には一般農地として税額の算出を行うのですが、「市街化区域農地」に該当する場合には、時として宅地並みに課税を受けることもあるので注意が必要です。

「市街化区域農地」にも複数の種類があり、「一般市街化区域農地」、「特定市街化区域農地」、「宅地等介在農地」などに分けられます。

一般農地

固定資産税の目安は10a(約300坪)あたり1,000円程度

一般市街化区域農地

固定資産税はそう高くありません。10aあたり約3万円~10万円

特定市街化区域農地

宅地なみの課税を受けることがあり10aあたり10万円~数十万円

宅地等介在農地

こちらもやはり宅地並みの課税になることがあるので注意

「農地は固定資産税も安い」というイメージを持っている人も多いようですが、それはあくまでも農作を行っている場合であり、農地がある地域などによっても異なります。

農作を続けている間は、特例処置などにより税が優遇されているのですが、それを知らずに相続して農作をやめてしまうと、ビックリするような固定資産税の納付書が届くこともありますので注意しておきましょう。

もし農地を相続して今後も農作をやることがないのであれば、早い段階で売ってしまうのが一番安心です。

これまでに説明したように、売りたくても売ることができないケースもありますが、「多少安くてもいいから売ってしまいたい」というのであれば、よほど人里離れている田舎でもない限りは、かなりの確率で売却することができます。

農地の購入について

農地は固定資産税も価格も安いので、戸建て住宅や賃貸アパートを建てるために、農地を購入しようと考える人もいるようです。ですが残念ながら、農地は農作をしている農家の人でなければ買うことができない決まりになっています。

しかしそれはあくまでも現農地というくくりであり、元農地であれば一般の人でも田んぼや畑を購入することはできます。

どういうことか説明すると、これまでは農地だったが農家を辞めてしまい、農地ではなくなった土地であれば購入が可能ということです。

しかし農作を止めたからといって、必ずしも売買できるわけではありません。農地を売却するためには、「農地転用」をしなければなりません。

農地転用とは
登記簿に記載されている地目を農地から「宅地」や「雑種地」に変更すること

農地でなくしてしまえば売却することはできますが、農地転用するためにはやはり届出をして許可を受けなければなりません。しかもこれがかなりの確率で許可されないケースが多いです。

農地の価格

農地といっても地域による価格差はもちろんあります。都心に近い農地は高値で取引されますし、山間部などの田舎になればなるほど安値で売買されています。

下の表は全国農業会議所が公表している農地(田んぼ)の平均取引価格なのですが、ご覧のように純農業地域と都市部農業地域では2倍~3倍ほどの価格差があることがわかります。

ちなみに純農業地域というのは山間部などの田舎を指しており、都市的農業地域というのは市街地に近い田んぼのことです。


(表:全国農業会議所 http://www.nca.or.jp/img/nousei_inquire/denpata/denpata27_youshi.pdf

純農業地域であれば全国平均は10a(約300坪)で127万円なのに対し、都心的農業地域では同じ10aの全国平均は約3倍の358.9万円となっています。

それでも1坪あたりに換算すると約1万円ということなので、宅地などと比較すると驚くほどの安値だというのがわかります。ちなみに田んぼに比べて畑の方が若干ですが、これよりも割安な価格で売買されています。

農地を購入するときも不動産会社にお願いするの?

農地売買は、一般の不動産会社はほとんど扱っていません。宅建業法は適用されませんし、なによりご覧の通り取引価格も安いので、不動産会社としてはほとんど仲介手数料の利益を見込むことができません。

そのため個人間での売買や、行政書士に依頼して契約を交わすのが一般的です。もちろん仲介手数料は発生しませんが、登記費用や依頼費用が掛かりますので、全て込みで10万円~30万円くらいの出費は覚悟しておくのが良いでしょう。

ただし先にも言ったように、農地を転用して、すでに地目が「宅地」や「雑種地」となっている農地であれば話は別です。このような農地は一般的に高値で取引されますし、造成などの問題もあるので不動産会社を介して行うのが一般的です。

農地を農地として売買するのであれば個人間で行い、農地を宅地として売買するのであれば不動産会社を通すと思っていてください。

農地を売却する際の注意点

これまでにも度々申し上げてきましたが、農地を売却するのであれば必ず許可が必要となります。自分名義の農地だからと言って、勝手に売ることはできません。

農地を農地のままで売るのであれば、売却先は農業に従事している人や企業に限られ、宅地や雑種地に転用して売却するのであれば、一般の不動産売買のように好きな相手に売却することができます。

ただし宅地や雑種地に転用するにも、当然許可を得ることが絶対条件となります。許可関係は基本的に、農業委員会や都道府県知事から得ることになります。ただし届出を出したからといって、必ずしも転用や売却の許可がおりるわけではありません。

農地転用や、売却の許可申請は個人でも行うことはできますが、届出を出すのにも農業委員会などの許可を受けなければならず、相当な労力を要しますのであまりおすすめしません。

過去に数回、農地転用の許可申請を代行したことがありますが、本当に申請書類を揃えるだけでも骨が折れる作業です。ですので、なるべく農地売買に長けた不動産業者か、行政書士などの専門家に依頼することを強くおすすめします。

売却先も決まっていないのに農地転用するのは危険

ここまで読んだ人のなかには、「とりあえず農地転用をしてから売却することを考えよう」と思っている人もいるかもしれませんが、それにはリスクがあります。農地を宅地に上手く転用できたとしても、すぐに買い手がみつからなければ相当な固定資産税を請求される可能性が高いです。

といっても、具体的な用途が決まっていなければ、農地転用の許可がおりることはほとんどありません。

農地のまま売却するなら何処に依頼すればいいのか?

農地のまま売却するのであれば、一般の不動産会社に売却を依頼するよりも、地域の農業委員会や農地売買の経験が豊富な不動産会社に絞って、お願いするようにしましょう。

地域によってはJAなどで購入希望者を斡旋してくれることもありますので、そちらにも忘れず相談してみてください。管理人としては、まずは特別控除の優遇を受けることができる農業委員会に相談することをおすすめします。

農地を売却した時の特別控除

農地を売却すれば、譲渡所得税が発生する場合があります。基本的に譲渡して得た利益が譲渡所得として課税の対象になるのですが、農地の売却には特別控除の優遇処置があります。

農地売却時の課税式は以下のようになります。

【譲渡所得金額】=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

【税額】=譲渡所得金額×(15%(所得税) + 5%(住民税))
※5年以内の短期譲渡に関しては、所得税が30%、住民税が9%で計算します。

上の計算式でわからないのは、特別控除の出し方だと思いますが、これには決まりがあります。

800万円控除の対象

農業委員会の斡旋により農地を売却した場合。
農業経営基盤強化促進法に基づき、農用地利用集積計画などに譲渡した場合。

1,500万円控除の対象

農用地区域内の農地等を農業経営基盤強化促進法の買入協議により、農地中間管理機構(農地バンクなど)に譲渡した場合。

5,000万円控除の対象

公共事業などの計画に該当して、その農地を売却した場合など。

では、仮に2,000万円で売却した場合の計算をします。

譲渡収入2,000万円-取得費1,000万円+譲渡費用50万円-特別控除額800万円=譲渡所得金額は150万円

150万円の15%が所得税なので22万5千円、5%が住民税なので7万5千円となります。

ただし、この計算には1つ問題があります。取得費が不明確な場合です。

特に、農地となれば先祖代々受け継いできた土地も多いので、その農地をいくらで購入したのかわからないことも多いです。そんなときは、取得費は譲渡価格の5%で計上できるようになっています。つまり、2,000万円で売却した場合の取得費は、わずか100万円ということになります。

それでもう一度同じ計算をしてみると、所得税は157万5千円となり、住民税も52万5千円となります。

農地の相続と売買まとめ

農地というのは、農作を止めることや田んぼや畑を売却することができないように、独自の「農地法」によって守られている特殊な不動産です。

個人の農地であっても勝手に売却することはできませんし、新たに農家になりたいという新規参入者も、簡単には受け入れることができないように作られています。

国内の食物を安心安全に供給するために、農地は何をするにも厳しく制限されているのですが、その反面税制面などではかなり優遇されています。

そのため、「親から相続した田んぼや畑を売ってお金にしたい」と思っても、そう簡単にはいきません。それでいて住宅用地の10分の1や30分の1ほどの価格でしか売れないのですから、農地を相続したら苦労する、と言われる意味がよくわかります。

もしあなたが将来的に農地を相続するのでしたら、相続してから物事を考えるのでは遅すぎます。しっかりとした準備をしておくことが農地売買には重要ですので、今すぐにでも家族と話し合いをして、将来的に農地をどうするのかを決めておくようにしましょう。

家を売るなら必ず知っておきたいチェックポイント

  • 信頼できる業者はどうやって探せばいいの?
  • 家を売りたくても売れない不動産業界の現状を理解しておこう。
  • 不動産業者に家の「買取」をしてもらうのは損?
  • 実家や土地を相続した場合はどうしたらいいの?
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